高野信治・著(九州大学助教授)
A5版・600頁
定価(本体9,800円+税)
「藩」とはなにか、その存在意義は何か、というテーマにもとずき「藩国」「藩輔」「藩領社会」をキーワードに鍋島氏佐賀藩・宗氏対馬藩・有馬氏久留米藩などを事例として、「藩国」と「藩輔」という二つの性格がどのように絡み合いながら「藩」は歴史的展開を遂げたのか、従来の藩史研究の認識と新たな課題意識および分析視角から論究する。
<内容>
序章藩国・藩輔・藩領社会
<第1部>成立期の軍制と藩領社会
第1章近世的軍制の創出
(1)鍋島氏による「第一次朝鮮侵略戦争」陣立(2)「与」編成の創出と編成原理(3)節朝鮮侵略戦争と旧国人層の対応(4)大名権力の強化と旧国人領主層
第2章成立期軍制の編成原理
(1)「与」・馬廻の強化政策(2)「与私」編成の創出(3)初期「与私」の特質(4)「与私」・「備」体制の成立とその意義
第3章大名財政の成立と運用形態
(1)大名財政の成立(2)初期大名財政の運用形態(3)竜造寺執政体制と大名財政(4)蔵方頭人制の確立と特質
第4章初期代官・郡代制の成立
(1)初期代官制の成立と構造(2)初期郡代制の成立と機能(3)初期代官・郡代制の変容
<第2部>藩領社会の展開
第5章軍制の構造
(1)「与私」の構造(2)軍役負担のメカニズム
第6章藩領支配の地域性
(1)代官・郡代支配の地域的展開(2)郡代秋役割(3)郡代支配の実態(4)藩領の地域的特質と支配機構
第7章藩政と村落
(1)給人と農民の分離(2)社会矛盾の展開(3)村落再建の論理と役人(4)給人化と役人化
第8章藩政・在町・街道
(1)松崎をめぐる環境(2)松崎藩の成立(3)廃藩・公領・返地(4)在町と松崎街道
<第3部>転換期の藩政と軍制
第9章政治論と政治形態
(1)二つの上申書(2)親類鍋島直章の政治進出(3)藩主側役層の台頭(4)文政七年の政変(5)仕与所体制の成立
第10章藩財政の危機
(1)文化前期の経済状態(2)財政政策と財政構造(3)赤札事件
第11章幕末期の軍制
(1)新「分限帳」の成立(2)幕末期軍制の構造
<第4部>藩研究の諸視角
第12章権力・武士・軍制
(1)『葉隠』にみる主君像(2)「御家騒動」への視角(3)武士への眼差し(4)軍制と近世武家社会
第13章地域論の視角
(1)九州・鎮西・対馬(2)九州における藩・天領の成立と構造(3)北部九州諸藩研究の課題(4)藩領社会のなかの地域(5)
時代の変化と地域
第14章比較史の視角
(1)幕府広域支配の論理(2)東北大名と国家・地域
第15章街道と宿場
(1)長崎街道と宿場(2)九州諸衛道と宿場・
補論研究の環境と成果
終章藩国と藩輔の構図